シャワー上がりの駅前のビルが湯気の中から現れる
地下から吹くぬるい風を受けて
ガラスにまとわりついた雫が空気に溶けてゆく
灰色のカーテンが開かれ
ぬるい風が鼻から抜けて
肺の中は少し乾いた冷たい空気で満たされる
昨日まで黒い枝の先で揺らめいていた花びらは
アスファルトに張り付き
スニーカー ハイヒール 革靴に踏まれる
明日にはもうビニールの中で砂利や雑草と一緒にされるんだろう
しっとりとした花びらは
もうレンズの中に閉じ込められていた
10通りの嘘を昨日用意した
論文のミスプリの裏紙に箇条書きにして
ポケットにしまっていた
みんなを驚かすような嘘が一つくらいあるんじゃないかと思っていた
けれどそんなものすら吹き飛ばすような、ものすごい嘘が
風に乗って花びらとともに目の前に現れた
そしてそれは一瞬で消え去って、
時間が経てば経つほど寒さで身体が震えるほどの嘘だった
この嘘こそアスファルトの上で踏みつけられ
ビニール袋に入れられて捨てられてしまえばいいのに
2017/03/21
霧の中のバスの中
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